晩発効果研究部門 DNA損傷シグナル研究部門
Our reseach
私たちの研究のご紹介
我々のラボのメインテーマは、DNA損傷後のシグナル伝達機構の解析ですが、なかでもファンコニ貧血原因遺伝子群の機能の解析に集中しています。
ヒト染色体ゲノムは、①自然放射線などによる外因性、②停止複製フォークに由来する内因性、これら両者によるDNA二重鎖切断(DSB)を中心とする障害に常にさらされおり、細胞にはゲノム障害を適切に回避する生体防御メカニズムが備わっていいます。正常人でもゲノム障害を回避しきれなければ発がんにいたるし、まれな遺伝病「ファンコニ貧血」や「家族性乳がん」などにおいては、この機構自体に機能異常があり、がんが多発します。
我々のラボでは、モデル細胞系におけるジーンターゲティング、プロテオミクス、ライブセルイメージングなどの方法論を駆使して、これらの疾患の分子メカニズムを解明しようとしています。
ファンコニ貧血は、骨髄不全と白血病などの高発がん性を特徴とするまれな小児の遺伝性疾患です(図1)。患者さんの細胞はDNAクロスリンク薬剤に極度の感受性と、染色体不安定性を示します。
近年新しい原因遺伝子の同定が進むにつれ、ファンコニ貧血においてDNAダメージレスポンスに欠損があることが明らかとなり、たいへん注目を集めています。
ファンコニ貧血原因遺伝子群は総計現在15にものぼりますが(表1)、うち8種類は核内でユビキチンリガーゼであるコア複合体を形成し、下流のファクターであるFANCD2とFANCIをモノユビキチン化します。その後、これらのファクターはクロマチンに移行しDNA修復機能を発揮すると考えられます (図2参照)。しかし、FANCD2やFANCIが実際に何を行っているのか、どのようにモノユビキチン化されたFANCD2がクロマチン上に移行するのか、その分子機構はまだよくわかっていません。
このメインテーマに関連して、以下のようなことにも興味をもって解析をすすめています。
- 家族性乳がんとファンコニ貧血経路
家族性乳がんの原因遺伝子であるBRCA2などの両アレル変異によってファンコニ貧血が発症します。家族性乳がんに関連したDNA修復経路とファンコニ貧血経路の関係を明らかにしたいと考えています。 - クロスリンク修復経路の解明
ファンコニ貧血患者細胞は、DNAクロスリンクに極度の感受性を示す。クロスリンク修復の分子機構はほとんどわかっていません。 - 非コードDNA領域をはじめとしたゲノムの維持機構の解析
ファンコニ経路やチェックポイント、DNA修復による複製フォーク停止解除のメカニズムを探ります。
がん特定研究のホームページに「ファンコニ貧血研究基金国際シンポジウム」の学会レポートとして解説を書いているので、参考にしていただければと思います。→http://gantoku3.umin.jp/topics/takada.html