ゲノム生物学講座 ゲノム損傷応答学分野 京都大学大学院生命科学研究科 高次生命科学専攻

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第39回放生研国際シンポジウムを広島で開催しました

放射線生物研究センターでは例年海外からスピーカーを招待して、国際シンポジウムを行っています。今年は第39回目で、当研究室が主催して企画をしました。生物種の進化および疾患におけるゲノム変化を題材とし、これらのゲノム進化の性質、背後にあるゲノム不安定性の原因、ゲノム不安定性を許容する分子メカニズムについて重要な発見を報告している若手で新進気鋭の研究者を日本にお呼びして、広島で行われた国際学会JRRS/ACRR2025に合わせて行いました。

複数の生物種、特に霊長類のゲノム解読を行っているYafei Mao博士はロングリードシークエンスを用いた全ゲノム配列の決定がヒトのみならず他の霊長類にも適用されてきており、ゲノムがどのように進化してきたのか、その痕跡から探ることができる可能性について紹介されました。

次に、そのようなゲノム変化が生じる原因を探る一つの切り口として、複製ストレス応答の解明が重要であるという視点から、Annabel Quinet博士にその詳細な分子メカニズムを解説していただきました。これらの発見は、生体が非常に繊細な複製ストレス応答機構をもつことを示唆しており、がんにおいて染色体不安定性が生じる原因や、それがどのようにして許容されるのかについてのヒントとなるご講演となりました。

最後に、ゲノム変化の起こる場所について様々な可能性がある中で、生物種間の比較で特に進化速度が速い領域としてリボソームDNA領域に着目し、その領域におけるDNA修復機構を専門とするDorthe Payne-Larsen博士に講演していただきました。核小体ストレス応答に関わる新規因子と、その結果として生じる疾患の発生メカニズムについて紹介され、ゲノム変化が疾患につながる過程のメカニズムの理解が重要な課題であることを再認識しました。

以上のような講演を通して、ゲノムが変化するという一見共通する現象に対して、その背後にある分子メカニズムの共通性や違いを解明するためのヒントを探ることができ、非常に充実した議論が展開されたシンポジウムとなりました。

Annabel Quinet博士にはシンポジウムに先立って京都でもセミナーをしていただき、非常に有意義で楽しいディスカッションを行うことができました。